色丹島と歯舞諸島の返還でカニ漁と観光の他のメリットとは

北方領土の領有権は1945年から現代まで日本とロシアの間で揉め続けてきた問題です。

あまりにも長い間この問題の進展はなかったため、北方領土の四島はロシアの実効支配が続いて日本人の立ち入りは出来ないことが常態になっています。

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※図はウィキペディアより引用

北方領土の周辺はカニなどの優良な漁場であり、景観も美しく観光需要も見込まれます。

しかし、日本の実質支配が及ばない地域であったため、現地の様子は情報が少なくてわからないことが多すぎます。

この北方領土については過去に何度か一部返還の動きがありましたが、国際政治の難しさの中で今日まで何の変化もないままです。

ところが2016年9月23日付の読売新聞に以下のような記事が掲載されて、一部返還があるかもしれないという雰囲気が感じられます。

「北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件」

政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。

平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。

複数の政府関係者が明らかにした。択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。

読売新聞

ただ、これまでも返還の期待が高まった時期はあったのですが、結果として変化はありませんでした。冷静な視点で事態を見守るしかありません。

日本政府は、日本はロシアよりも早い時期から北方領土の統治を行っており、1945年のポツダム宣言では「日本国の主権は本州、北海道、九州、および四国ならびに連合国の決定する諸小島に限定」とされていますがここに北方領土は含まれると解釈しています。

よって、現在まで続くロシアによる北方領土の統治は不当なので返還するべきだとの出張をしてきました。

一方でロシアには北方領土は第二次世界大戦で多大な犠牲を払った上での戦利品という認識があり、それを手放すことは出来ないという国民感情があるようです。

このように日本とロシアの主張は真っ向から対立しており簡単には解決の出来ない問題になっています。

それでも日本とソ連(ロシア)の間での領土交渉は粘り強く続けられてきました。

1956年の日ソ共同宣言では、歯舞諸島と色丹島を平和条約締結後に日本に引き渡す取り決めが結ばれ、これにより日本はソ連の賛同を得て国際連盟に加盟できたという経緯があります。

しかし、その後の冷戦などの国際情勢もあって、日本とソ連(ロシア)の間で平和条約の締結は行われることなく現在に至りました。結果として歯舞諸島と色丹島の返還もされていません。

このような歴史をたどってきた北方領土ですが、択捉島と国後島にはロシアの資本が投入され開発が進んでいるようです。ロシア人の入植も積極的に行われて、戦後80年のロシアによる統治の実績が出来上がっています。この二島の返還は現実的に困難であり、歯舞諸島と色丹島の二島に絞って返還交渉を進めるという「二島先行返還論」が注目されています。

ただし、ロシアのプーチン大統領も無料で二島を返還してくれることはありません。日本がロシアに対して相当規模の経済協力をすることが求められるという見通しです。

すると歯舞諸島と色丹島にそれほどの経済的価値があるのかという話になります。

カニ漁や観光地としての開発などの魅力はありますが、日本が負担する経済支援の費用に見合うものになるとは思えません。

領土問題は経済的な損得勘定だけではないという見解も理解はできますが、問題は日本が負担する金額がいくらになるかということです。

もし、法外な金額の経済支援と引き替えに二島返還を実現する場合は、ロシアとの友好を強く推進したいという思惑があるということでしょう。

日本が領土問題を抱えるのはロシアだけではなく、中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島の問題があります。中国と韓国との交渉も一筋縄ではいきません。

特に現在は中国の軍拡の脅威を強く感じている日本としては、中国と国境を接する大国のロシアを味方に引き入れたいという事情もあるわけです。

このような複雑な事情を抱えて2016年12月に日露首脳会談が予定されていますが、その場で歴史が動くような共同声明があるのか否かに注目が集まります。

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