憲法改正の発議と国民投票の手続|改憲3党の主張

2016年の参議院選挙では改憲勢力(自民・公明・維新・こころ)が参議院の3分の2以上の議席を占める結果となりました。衆議院でも同様の状況であるため、日本国憲法を改正する発議が可能な政治状況になり、改憲が現実味を帯びてきました。

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憲法の改正については、は日本国憲法第96条にルールが定められています。

憲法第96条

この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

つまり、憲法改正には、衆議院と参議院の両方で3分の2以上の賛成で発議し、その後に国民投票を行って過半数の賛成を得なくてはならないということになります。

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その憲法改正案については、自民党が2012年に改正草案を公表していますが、これは自民党内での試案であり、安倍総理も今後の憲法審査会を通じて他党との擦り合わせをしていくと語っています。

一口に改憲案と言っても、自民・公明・維新のそれぞれの主張は異なっており、発議までにこれらの党間での議論も白熱しそうです。

以下に3党の改正案について概要を挙げてみます。

<自民> ※2012年に公表された草案より一部のみを抜粋

・前文の先頭に「国民統合の象徴である天皇を戴く国家であつて、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」を挿入。

・天皇を元首と明文化(第1条)

・日章旗を国旗とし、君が代を国家と明文化(第3条)

・戦争を放棄し、武力の行使は国際紛争を解決する手段としては用いないとするが、自衛権の発動を妨げるものでは無い(第9条)

・国防軍の設置を明文化。国防軍の組織統制のために審判所を置く。(第9条の2)

・個人情報の不当取得の禁止(第19条の2)

・表現の自由については、公益、公の秩序に害する目的とした活動は認めない(第21条)

・国に環境保全の責務を設ける(第25条の2)

・在外国民の保護規定を設ける(第25条の3)

<公明>

※平和・人権・民主の3原則を堅持しつつ、時代の進展に伴い提起されている新たな理念・条文を加えて補強していく「加憲」を主張

・環境権や地方自治の拡充などを対象として検討

・憲法第9条については、戦争放棄を定めた第1項、戦力の不保持等を定めた第2項を堅持した上で、自衛のための必要最小限度の実力組織としての自衛隊の存在を明記。

・厳格な改正手続きを備えた「硬性憲法」の性格を維持。

<維新>

〈1〉幼児教育から大学まで教育無償化〈2〉道州制実現のための統治機構改革〈3〉憲法裁判所の設置の3つの柱について改正。

自民党は踏み込んだ改憲草案を公表していますが、現時点では他党は大まかな方向性のみを示しているだけです。

自民党の国防軍設置や国防軍内に審判所の設置する規定は、かなり強面の内容になっており、審査の過程で修正されていくものと思います。

公明党は創価学会との関係で、信教の自由規定(第20条)について修正(加筆)を求める可能性がありそうです。

維新の会については、教育無償化や道州制、憲法裁判所を盛り込むことを条件にその他の規定の擦り合わせをするのかもしれません。

それでは憲法改正の発議と国民投票は一本化して行われるのか、個別事項ごとに行われるのかが気になるところです。

これについては国会法68条の3で、「憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」とされております。

例えば、「天皇や国旗・国家」、「平和主義と国防軍」、「教育と信教の自由」というような区分をして、それぞれの事項について発議をするようです。

憲法改正の発議から国民投票までの具体的な手続については、「日本国憲法の改正手続に関する法律」に定められています。

同法によれば、国民投票は国会が憲法改正の発議をした日から60日以後より180日以内に行われるものとされています。

投票権は、日本国民で18歳以上の者に認められます。(国民投票期日の50日前において住民基本台帳に記録されている者)。

このように憲法改正の議論や手続進行が現実的になってきました。国民生活に重大な影響がある事ですから、公表される内容をよく読んで判断をしましょう。

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