高校生の借金は取消しできる?|未成年者の契約取消権(民法5条2項)

例えば高校生が100万円の借金をして返済能力が無いために返せなくなった場合には、法的に支払いを拒否することができます。

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これは民法5条2項で「未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる」と定められているためです。

これにより未成年者本人と法定代理人(通常は父母)は100万円を返済するという契約を取り消しすることができるため、合法的に支払いを拒否できるわけです。

ちなみに、この未成年者の契約取消権を行使した場合、未成年者は現存利益の範囲で返還すればよい(民法121条)とされています。これは100万円を借りて90万円を使ってしまった状況で契約取消をすれば、残額の10万円だけを返せばよいというものです。

つまり、未成年者である高校生にお金を貸した大人は、貸したお金を踏み倒されても仕方ないということです。

連帯保証人を定めずに高校生にお金を貸す方が悪いという扱いです。それだけ法律では未成年者が保護されているのです。

ただし、この契約について法定代理人の同意を得ている場合には契約は有効として扱われるので、100万円全額の返済義務を取り消すことはできなくなります。(契約書に父母が連帯保証人として名前を連ねているようなケースです。)

また、未成年者であっても結婚をしている場合には成年擬制(民法753条)といって、成年に達しているとみなされるので、未成年者取消権の行使は出来なくなります。結婚をするくらいの判断力があるのだから、未成年者の保護は必要ないということです。

そうした法定代理人の承認が無い状態で、未婚の未成年者がした契約は基本的に取り消しが可能です。

なお、この取消権の時効は未成年者が成年になったときから5年間、または契約から20年間です。(民法126条)

例えば17歳時点で100万円の借金をしても、それから5年間の22歳までは取消権を行使できるということです。

未成年者の女性にお金を貸して、それを使い込むのを待って返済を迫り、返済の代わりに風俗店への勤務を強要するというような事件もありますが、これも早期に未成年者取消権を行使すれば解決します。

その他には、年齢承認をしないオンラインゲームで未成年者が高額課金をしてしまったようなケースでも、未成年者取消権が行使されたことがあります。

平成28年から選挙権の年齢が18歳に引き下げられましたが、将来的には民法の成年規定も同様に18歳に引き下げられる可能性があります。そうなれば未成年者取消権が行使できるのは18歳までとなります。

20歳と18歳では2年間の違いがありますが、こうした保護規定が2年間短縮するのは青少年にとって不利益になる部分もあるわけです。

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